アメリカ疾病予防管理センター (CDC)は16日、「殺人アメーバ」として知られるフォーラーネグレリアの生息域が、温暖化の影響で北上していることを発表しました。

アメーバによる感染症はこれまで、アメリカ南部州を中心に報告されていましたが、ここ数十年で北部での症例が増加を続けているとのことです。

研究は、12月16日付けで『Emerging Infectious Diseases』に掲載されています。

目次

  1. 「人喰いアメーバ」、温暖化で生息域が北上していた

「人喰いアメーバ」、温暖化で生息域が北上していた

フォーラーネグレリアは温かい淡水に生息し、人の鼻から侵入して脳を食べる危険生物です。

「原発性アメーバ性髄膜脳炎 (PAM)」という感染症を引き起こし、味覚・嗅覚異常が生じたあと、嘔吐・頭痛・発熱が続き、最悪は死に至ります。

感染ルートは鼻のみであり、アメーバに汚染された水を飲んでも感染は起きません。

25〜35度の温水域ならどこでも生息できるため、夏場の池や川、湖で泳ぐことでの感染が多く、温暖化の影響で生息範囲は今後さらに広がると懸念されています。

脳を食べる「殺人アメーバ」、温暖化により北上していることが判明!
(画像=フォーラーネグレリアの生活環 / Credit: ja.wikipedia、『ナゾロジー』より 引用)

CDCは今回、1978〜2018年までのアメリカ国内における感染例を分析し、その変化を調べました。

「温水での遊泳による感染」という基準を満たすケースは全部で85件あり、年間の平均件数は0〜6件と経年による変化は見られませんでした。

しかし、感染の地理的範囲は明らかに北上していることが判明しました。

85件のうち74件は南部で発生していますが、6件は北部および中西部であり、しかも5件は2010年以降に発生しています。

脳を食べる「殺人アメーバ」、温暖化により北上していることが判明!
(画像=アメリカでの症例の変化 / Credit: CDC、『ナゾロジー』より 引用)

さらに、コンピューターモデルを使って感染が起きた最大緯度の変化を調べてみると、対象期間中に年間約13.3キロも北上していることがわかりました。

気温の上昇と、それに伴う遊泳やウォータースポーツの増加が、こうした変化にかかわっていると見られます。

日本での症例は1996年に一度報告されたのみで、それ以降は発生していません。

しかし、このまま温暖化が続けば、殺人アメーバが日本にまで生息範囲を広げる可能性は十分にあります。

CDCは「水がフォーラーネグレリアに汚染されていることを迅速に特定する方法はまだ存在しないため、現時点では、温暖な淡水域での遊泳を避けることが最も効果的な感染予防になる」と述べています。

参考文献
livescience
zmescience

提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功