長期化するコロナ禍で、世界では「ウィズコロナ」時代へと転換をはかる動きが見られるようになりました。

そうした中で、日本旅行業協会が「夏休み前までに国際往来一部再開」を訴えるなど、日本でも厳格な水際対策などによる「コロナ抑え込み」の姿勢が再考され、インバウンド再開にも注目が集まっているといえます。

株式会社JTB総合研究所が発表したレポートから、国際旅行需要の現状、アフターコロナに向けた効率的な対策を考えます。

目次

  1. JTB総研がレポート発表、アフターコロナのインバウンドを考える
    1. コロナ禍が国際旅行市場にもたらす影響は「間接的影響」へ
    2. 「経済成長率」と「国際旅行者数の伸び率」の相関性
    3. インバウンド主要市場の海外旅行者数も減少の恐れ
    4. 国際旅行需要回復期に旅行単価、旅行者数はどう変化する?
  2. 求められるのは「コロナ前」のインバウンドからの脱却と転換か

JTB総研がレポート発表、アフターコロナのインバウンドを考える

株式会社JTB総合研究所(以下:JTB総研)が、2022年3月16日に「データで見る訪日インバウンド市場トレンドマーケット・リカバリー・ウォッチ特別号」を発行しました。

これは、新型コロナウイルス感染症拡大により訪日旅行がストップしたことを受けて2020年2月以降発行を中断していたため、パンデミック後初のレポートとなります。

レポートからは、コロナ禍による国際旅行需要への影響は直接的影響のフェーズ間接的影響のフェーズへと移行しつつあること、1国における経済成長率と国際旅行者数の関連性などが指摘されています。

コロナ禍が国際旅行市場にもたらす影響は「間接的影響」へ

新型コロナウイルス感染症の流行開始から約2年が経過しました。

コロナ禍によって大きな打撃を受けた国際旅行市場ですが、その影響は現在、水際対策などの「直接的影響」から物価上昇や経済活動の停滞などを経由した「間接的影響」のフェーズへと移行を見せているということです。

実際に、2022年3月現在、海外各国では入国制限などの緩和が進んでおり、国際往来をストップさせる直接的な影響は小さくなっているといえます。

これを踏まえ、JTB総研は「直接的影響が落ち着きを見せたころに間接的影響が顕著になる」との見解を示しました。

今後は物価上昇による消費意欲の圧迫がもたらす需要サイドへの間接的影響、人出不足などによる供給サイドへの間接的影響などが懸念視されると分析しています。

アフターコロナのインバウンド、注目は「主要国の回復鈍化」「量から質へ」 JTB総研レポート
▲新型コロナによる直接的影響と間接的影響:JTB総研レポートより編集部スクリーンショット(画像=『訪日ラボ』より 引用)

「経済成長率」と「国際旅行者数の伸び率」の相関性

続けてJTB総研が指摘したのは、1国の経済力、経済成長率、国際旅行者数の推移の関連性です。

各市場の海外旅行者数は経済成長率との相関が高いとし、経済成長率の下方修正は旅行者数の伸び率に大きく影響すると予想しています。

経済成長率に関しては、コロナ禍で感染対策を十分に講じられるような経済力をもつ先進国が早期に回復を見せ、新興国は相対的に遅行するということです。

アフターコロナのインバウンド、注目は「主要国の回復鈍化」「量から質へ」 JTB総研レポート
▲2019~2024年の実質GDP成長率予測値(年率):JTB総研レポートより編集部スクリーンショット(画像=『訪日ラボ』より 引用)
アフターコロナのインバウンド、注目は「主要国の回復鈍化」「量から質へ」 JTB総研レポート
▲2019~2024年の海外旅行者数成長率予測値(年率):JTB総研レポートより編集部スクリーンショット(画像=『訪日ラボ』より 引用)

インバウンド主要市場の海外旅行者数も減少の恐れ

これまで訪日旅行の主要マーケットの一つでもあった東南アジアや東アジアの国々の中にも、経済成長率が大きく下方修正された国、地域があります。

同地域では海外旅行者数の伸び率も大幅に下がる可能性が高いとされており、日本のインバウンド再開時の訪日旅行者数にも同様の動きが見られると考えられます。

アフターコロナのインバウンド、注目は「主要国の回復鈍化」「量から質へ」 JTB総研レポート
▲インバウンド主要市場における旅行者数の伸び率予測:JTB総研レポートより編集部スクリーンショット(画像=『訪日ラボ』より 引用)

国際旅行需要回復期に旅行単価、旅行者数はどう変化する?

アフターコロナの国際旅行市場では、旅行者数の伸び率停滞が懸念されるということです。

コロナ前の2019年はまさに市場が盛り上がりを見せており、1980年比で国際旅行者数は5.29倍、国際旅行受取額(旅行者消費額)14.10倍と飛躍的な増加を見せていました。

特に2011年~2019年ごろの国際旅行需要の特徴としては、旅行者数の伸び率が上昇、一方で単価は下落していたことが挙げられます。国際経済の物価停滞の影響が国際旅行市場にも反映された模様ですが、旅行者数の増加によって旅行市場は成長していたとみられます。

では、アフターコロナの旅行単価、旅行者数はどのように変化し、市場の動きはどう変わっていくのでしょうか。

JTB総研のレポートでは、国際旅行需要の今後について2つのシナリオが示されています。

シナリオ1は「旅行単価が上昇、旅行者数の伸び率は減速する」という見解で、シナリオ2では「旅行単価、旅行者数の伸び率とも横ばい」との推測です。

そしてレポート内では、「物価上昇は旅行単価の上昇に結び付く可能性が大きく、そして単価が上昇すれば相対的に旅行者数の伸び率は抑制される可能性が高い」と唱えられ、シナリオ1が有力だと考えられています。

アフターコロナのインバウンド、注目は「主要国の回復鈍化」「量から質へ」 JTB総研レポート
▲アフターコロナの国際旅行市場に関する2つのシナリオ:JTB総研レポートより編集部スクリーンショット(画像=『訪日ラボ』より 引用)

求められるのは「コロナ前」のインバウンドからの脱却と転換か

今後の需要回復期における国際旅行市場では、「旅行単価が上昇、旅行者数の伸び率抑制」という展開となる可能性が高まっています。

すなわち、実質単価の低下を背景に旅行者数が伸びたコロナ前の状況が逆転すると考えられ、インバウンドマーケティングも「量から質へ」の転換が急がれるといえるでしょう。

具体的には、先に旅行需要が回復すると期待される富裕層、余裕層に目を向けた戦略が求められるとともに、従来の「主要市場国」の急速な回復は困難である可能性も視野に入れる必要があります。

インバウンド再開に備えるために、マスツーリズムからの脱却、これまでの業態やコンテンツの転換が今後の鍵となると考えられます。

文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ

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