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睡眠の断片化を薬で治療することに成功
高齢者が長時間ぐっすり眠れる薬が開発できる

睡眠の断片化を薬で治療することに成功

高齢者が夜中に目覚めてしまう原因はナルコレプシーの逆転現象だった!
(画像=睡眠の断片化を薬で治療することに成功 / Credit:Canva、『ナゾロジー』より引用)

「覚醒信号の早漏」を治す手段はあるのか?

研究者たちは解決法を探るべく、脳細胞(オレキシンニューロン)の過敏化がどのようなメカニズムで起きているかを調べました。

結果、過敏化の本質が、カリウムイオンチャンネルと呼ばれるタンパク質の減少であることが判明します。

このタンパク質は脳細胞の「OFF」時の電位を維持する働きがありますが、老マウスの脳内ではこのタンパク質が減少しており、常に限りなくONに近い状態(過敏状態)にありました。

そこで研究者たちは、カリウムイオンチャンネルを刺激する「フルピルチン」を老マウスに投与しました。

すると予想通り、老マウスの脳細胞の過敏化が解消され、老マウスは睡眠途中に目覚めることはなくなりました。

この結果は、睡眠の断片化が「体力がなくなる」といった肉体的な原因ではなく、脳細胞の電気的性質の変化に起因することを示します。

高齢者が長時間ぐっすり眠れる薬が開発できる

高齢者が夜中に目覚めてしまう原因はナルコレプシーの逆転現象だった!
(画像=高齢者が長時間ぐっすり眠れる薬が開発できる / Credit:Canva、『ナゾロジー』より引用)

今回の研究によって、加齢にともなって夜中に目が覚めるようになってしまう現象の正体が明かされました。

突発的に目覚める睡眠の断片化は、突発的に眠るナルコレプシーと表裏の関係にあり、脳を覚醒させるシステムの過敏化が原因となっていました。

(※ナルコレプシーは覚せいシステムの欠如が原因で夜中に起きる睡眠障害は覚せいシステムの過敏化が原因)

また過敏化の起こるメカニズムは、脳細胞の静止時(OFF時)の電位を維持するタンパク質(カリウムイオンチャンネル)が減少し、常にONに近い状態になっていることが原因でした。

そしてカリウムイオンチャンネルの働きを高める薬を投与することで、老マウスに起きていた睡眠の断片化を取り除くことにも成功します。

睡眠の断片化はマウスでもヒトでも同じような仕組みで起きている可能性が高く、同様の処置で高齢者たちの睡眠を若い時と同じ状態に改善できると考えられます。

ただ問題がないわけではありません。

老マウスの睡眠改善に用いたフルピルチンはかつて人間用の鎮痛薬として用いられていましたが、肝臓に対する毒性が発見されたために、欧州医薬品庁は2013年に急性の痛みに対してのみに使用が制限され、その後2018年には販売承認が取り消されました。

そのため研究者たちはフルピルチンの作用に似た毒性のない薬を開発する必要について言及しています。

ですが改良元となる薬が存在する場合、0から薬を開発するよりも迅速に開発が進むと期待されます。

もしかしたらそう遠くない未来では、夜中に目覚める高齢者がいなくなり、老人が早起きだという常識も通用しなくなるかもしれません。

それまでは「覚醒信号の早漏」を引き起こさないように、寝室を刺激(光や音など)の少ない環境にしたりするなど、既存の対処療法で一緒に頑張っていきましょう。

【編集注 2022.03.01 15:00】
記事内容に一部表現及び誤字を修正して再送しております。


参考文献

Science of sleep: Why a good night’s rest gets harder with age

元論文

Hyperexcitable arousal circuits drive sleep instability during aging


提供元・ナゾロジー

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