東京オリンピックでの経済効果は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当初の計画より減少しました。

本記事では、新型コロナウイルス感染拡大の影響により失われた経済効果、また新たに生まれた需要による経済効果について紹介します。

目次

東京オリンピック・パラリンピックでの経済効果
コロナ以前、東京都による試算は1.9兆円
開催直前海外観客受け入れ停止により経済効果は目減り
開催後の経済波及効果への評価は
五輪パラでの経済効果推定6兆円、宮本名誉教授試算
新規経済需要だけの経済効果は1.8兆円
コロナ禍での開催で新たに生まれた経済需要
アフターコロナのインバウンド需要に変化は
コロナによるインバウンドへの影響は増加?
開催後のJNTOによるインバウンドへの影響試算
オリンピックによる経済効果は今後も継続か

東京オリンピック・パラリンピックでの経済効果

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、東京オリンピック・パラリンピックでの経済効果は、当初の見込みよりも減少しました。 いっぽうで巣ごもり需要などにより、新たな需要も生まれました。

コロナ以前、東京都による試算は1.9兆円

2017年4月に東京都が公表した「東京2020大会開催に伴う経済波及効果」では、東京都の需要増加は直接的効果で1兆9,790億円と試算されていました。 そのうち新規施設の整備費が3,500億円を占め、1兆6,290億円分はオリンピック開催により変化する経済効果となっていました。 その後新型コロナウイルス感染拡大の影響により開催が1年延期され、それに伴う追加支出が見込まれました。 さらに2021年3月には海外観客の受け入れの停止を発表し、海外観客のチケット代金や関連消費支出が失われました。

開催直前海外観客受け入れ停止により経済効果は目減り

東京オリンピック・パラリンピック開催直前の2021年5月、野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミストである木内登英氏は経済損失の試算を発表しました。 海外観客受け入れ中止によりインバウンド需要の経済効果を失うとして、約1,500億円の経済損失を試算しました。 また2020年に予定されていた大会の1年の延期によって追加支出が生じたり、新型コロナウイルス感染対策の経費が新たに計上されたりしたことで、2017年の試算とは異なる経済効果が試算されました。 木内氏は大会開催による経済効果は1兆8,108億円と試算しましたが、この試算では海外観客向けに販売され、払い戻しが行われたチケットは国内観客に回るものとしています。 そのためほとんど無観客で行われた本大会では、さらなる損失が見込まれます。

開催後の経済波及効果への評価は

開催後にも、経済波及効果の試算が発表されました。

海外観客受け入れの停止や緊急事態宣言の発令、無観客での開催になったことで、経済への直接効果は当初の試算より少なくなっています。

しかし大会開催による街の整備や、大会中の海外メディアによる宣伝やオンライン広告などの影響で、アフターコロナでのインバウンド需要の増加も期待されています。

五輪パラでの経済効果推定6兆円、宮本名誉教授試算

2021年8月26日、関西大学の宮本勝浩名誉教授は東京オリンピック・パラリンピックの経済効果と赤字額を推定しました。

経済効果は約6兆1,442億円、オリンピック組織委員会と東京都、国の赤字額は約2兆3,713億円となりました。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、海外観客に次いで国内観客の受け入れも停止され、ほぼ無観客となったことで当初の計画より大幅に減少しました。

いっぽう巣ごもり観戦による需要は増加しています。

新規経済需要だけの経済効果は1.8兆円

経済評論家である鈴木貴博氏によれば、東京五輪開催における新規経済需要だけの直接効果は1.8兆円とされています。

ただし大会開催によるインフラ整備やバリアフリー化などの建設投資においては12.9兆円、121万人の雇用が誘発されるという試算はおおむね実現されており、悪い点だけではありません。

赤字1兆円を上回る経済効果はすでに発現していますが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響による国際的な移動制限で、インバウンド需要の増加は起こらず、今後も増加は見込めないとしています。

コロナ禍での開催で新たに生まれた経済需要

いっぽう国内では、新たに「巣ごもり観戦」による需要が増加しています。

スポーツ観戦に最適な有機ELテレビや、録画レコーダーなどの売り上げが伸長し、持ち帰りや宅配飲食の売り上げも好調となっています。

また五輪スポンサーが無観客向けの広告へ切り替え、選選手村にある日本企業の商品について選手がSNSで発信したことなども話題となりました。

さらに五輪グッズも売り上げを伸ばし、日本のメダルラッシュにより売り上げは好転し、店舗によっては売り上げが7倍となりました。

アフターコロナのインバウンド需要に変化は

東京オリンピック・パラリンピックは海外観客の受け入れが停止され、世界的に流行が続く新型コロナウイルスの影響でインバウンドの増加は見込めませんでした。

しかし大会開催中には全世界の注目が日本に集まりました。

アフターコロナのインバウンド需要に変化は起こるのでしょうか。

コロナによるインバウンドへの影響は増加?

経済評論家の鈴木氏はコラム内で「アフターコロナでインバウンドが回復したとしても、少なくとも五輪効果の口コミによる観光客増大効果は得られない」とコメントしており、12.9兆円と試算されたインバウンド効果は失われると予測しています。

いっぽう第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミストの永濱利廣氏は、インバウンド効果にポジティブな影響があると予測しています。

これまでのオリンピック開催国でも、オリンピック後に外国人観光客が増加する傾向があることに着目し、五輪開催によるポジティブな影響を予測しました。

オリンピック開催により、海外観客向けのインフラ整備やバリアフリー化などは成功しており、整備された東京への観光需要の復活が期待されています。

開催後のJNTOによるインバウンドへの影響試算

JNTO(日本政府観光局)は2022年1月26日、五輪後の訪日意欲効果測定レポートを発表しました。

東京五輪を契機とした報道やプロモーション、SNS投稿などを通じて、推計3.9億人の将来の訪日意欲が向上したことが分かりました。

また米・中・英・仏のアンケート対象者の70%以上が広告を視聴した結果「日本を訪れたい」と回答しており、訪日観光へのポジティブな影響が明らかとなりました。

東京オリンピック時に行われた海外メディアへのアプローチや、オンラインでの広告表示はポジティブに作用したと考えられます。

さらに英国のNational Geographic Traveller 誌の2021年度読者アワードで、「最も訪れたいロングホール旅行先(Best Long-haul destination)」と「ウィッシュリストに含めたい旅行先(The wish-list destination)」に日本が選出されました。

オリンピックによる経済効果は今後も継続か

東京五輪では、大会の延期や新型コロナウイルス対策により支出が増えたものの、巣ごもり観戦の需要が増加しました。

またスポンサーが無観客観戦向けのプロモーションに切り替えたことで、需要が大きくなりました。

国際的な移動規制緩和後のインバウンド需要の増加も期待され、今後は中長期的にどのような動きが見られるか注視が必要です。

文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ

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